胸に手を当てる -トランスジェンダーの日常 vol.3
2021年12月7日、火曜日。雨。
6時起床。トイレに行き、体重を測る。一杯の水を飲む。
自分の胸を触る。何だか胸が厚くなったような気がする。胸筋が鍛えられたのか?ちなみに鳩胸なので、胸板は元から厚い。
「女性」だったら、この平らな胸の割に厚い胸板はきっとひどくコンプレックスになっていたと思う。
彼女から、「女の子だったらかわいそうな体型だよね...。」
と言われることは、僕にとってはある種の慰めになる。
自分の身体の、女性らしさから外れた部分を見つけ出しては自分をほっとさせる。
自分の身体が女性であることの実感が未だにあまり持てないため、僕はひどい身体嫌悪は持っていない。こんな身体嫌だ!という感情を持てる人は、自分の身体をよく見ていると思う。自分にとって理想の身体イメージと現実の身体が異なるからこそ、身体嫌悪が起きるのだろう。僕は男性の身体を見るとひどく嫉妬してしまうからこそ、見ようとしてこなかった。*1自分の持つ女性の身体も未だに直視していないような気がする。男性の身体も女性の身体も正直、よくわからない。
時々思うのは、オペをしないで戸籍変更ができるとしたら、自分はオペをしているだろうか、ということ。おそらくホルモン療法だけに留めているような気もする。ホルモン治療をして埋没して暮らした上で生きづらさを感じたとしたら、オペをしていると思うが、さて。
ホルモン療法5~10年で戸籍を変えれますよ、なんて制度があったとしたら、きっと胸オペだけで済ますような人が多いと思っているのだが、これもさてさて。
こういうことを書くと、「お前はオペしなくていいよ」という声が外野から聞こえてきそうだが、それもさてさて。
社会を変えるより自分を変える方が楽。ノンバイナリーを表明する人には敬服する。
自分には結局その生き方はしんどかった。
シス男性になれなかったシス男性。FTM。トランスジェンダー。ただの人間。
ここからどう意識は変容していくのだろうか。自分の人生を丁寧に追えるのは自分しかいない。
そんなことを思いながら、今日も1日を生きる。