彼女の愛の言葉は独特である。
「さねすけのこと、世界で52番目に好きだよ」
この謎の言葉。
世界で52番目・・・?
もうこのフレーズは何百回と聞いていると思う。記憶が正しければ、かれこれ大学生時代から言われ続けている謎の言葉なのである。
「世界で一番好きだよ」と、彼女は頑なに言おうとしない。何年経っても僕のランクは何故だか50番台のまま変わらず、決して1番にはさせてくれないのである。これには何か深い理由があるのかもしれないと考えたこともあるが、彼女に探りを入れても確からしい答えが返ってきた試しがない。僕には言えない理由とは一体なんだろう?言えないことなんてあるのか?◯◯の件や××の件だって、自ら告白してきた彼女がまさか今更僕に言えないことなんてあるわけ........
ああそうか。もしかしたら彼女は秘密裏に魔の主と契約でも結んでいるのかもしれない。「世界で一番好きだよ」と彼女が僕に言おうものなら、僕はたちまち病に伏せて死んでしまうのかもしれない、だから言えないんだ、なんてゴ冗談。筒井康隆が思い浮かぶ。
知ってるよ、彼女が気まぐれで、語感が良いからという理由だけで適当に言ってることは分かってる。
何せ、順位は「52番~55番」の間で、その時々で数値が変わっているし、
僕がちょっぴり弱っているときには、
「さねすけのこと、誰よりも好きだよ。世界で1番好き。...あっ間違えた。今のはうそだよ、52番目に好きだよ」
なんて言ってくるもんだから。
魔女との契約もなければ、何の理屈も意味もないのでしょう。
52番目にまつわる謎は、付き合いが長くなってもよくわからないまままだけれども、
「世界であなたが番好き」
と言われるよりも、僕は耳馴染みのある、
「世界で52番目に好きだよ」
と言うフレーズが、いつの間にか大好きになっていた。
大した意味のない言葉も、時間と共に大切なものになっていく。
.......クサいぞさねすけ(*´-`)
付き合いが深くなると、2人だけに通じる言葉って自然と生まれてくるものですよね。
「今日も52番目に好きだよ」って言われて、つい頬がゆるんでしまったところです。
でれでれしているのが声ですぐバレてしまう。
おまけ
僕が彼女の真似をして
「世界で52番目に好きだよ」
と言おうものなら、彼女はいつも、
「何言ってんの、一番でしょー!一番じゃないと許さないから!」
と駄々をこねてきます。
そうです、これもいつものお約束。